原子力を止めることばかりに熱心な一方で、太陽光発電開発に国民の心を動かす「積極的」な政府主導が無いことが誠に不思議だったが、ようやく蓄電池と太陽光の話が紙上に出てきた。
また、今年一月には「蓄電池戦略プロジェクトチームが」が経産省に設置されたことも知った。
誠に同慶の至りである。
「大型蓄電池開発を支援 政府・与党が7月方針策定へ 来年度予算化」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/econpolicy/559270/
「大型蓄電池、政府が本腰 市場拡大「低価格」カギ」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/environment/559287/
「再生エネ買い取り「太陽光42円」 普及促進に軸足 設備コスト負担に課題」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/environment/558574/
もっとも太陽光は目の前の原子力発電の代替エネルギーとしては時間もかみ合っていないし、温暖化ガスの点からは代替ではない。太陽光発電の本質は化石燃料(メタンハイドレートも含む)の代替である。だから、現下の問題を契機に、遠い将来を見据えたエネルギー開発として取り組むことが我が国にとって絶対に必要である。
昨年11月に書いた「太陽光発電システム実用化の施策」を再度、提唱したい:
施策は二つの事項を同時に行うことから成る。
(1)電気自動車を急速に大普及させる施策と大キャンペーンを実施する。(目標はいづれ全部を電気自動車に移行することである。)
(2)電気自動車用充電価格を再生エネルギー買取価格と合わせる(或いはある関係で連動させる)
この施策の大目標は蓄電池の技術開発を強く推進する契機と、それを援助することにある。それによって太陽光発電システムの発達を促進する。
その意味を以下に説明する。諸事が関連し合うのでよくご理解願いたい:
1.蓄電能力は、太陽光発電が実用的電源として電力系統にある程度の比率を占めるためには絶対不可欠な条件である。蓄電能力は太陽光発電実用化の死命を制する。実質的には、蓄電池の技術・価格革新である。
2.電気自動車の技術的及び営業的成否は、蓄電池の技術開発に100%依存している(現状では、蓄電池価格は電気自動車価格の恐らく過半を占める)。従って、上記施策(1)の政府による電気自動車の普及運動で、蓄電池の開発にドライブが掛かる。電力用と自動車用では多少の技術的違いはあっても、大きい技術の流れは同一であろう。
蓄電池の技術・価格低減の障害は太陽光発電素子のそれより遙かに高く克服が容易ではないから、目の前の市場をかけた熾烈な競争が必要である。
政府による開発費援助の財源を得る事も必要でありそれについては後述第6項参照。
3.上記施策の(2)は、太陽光発電と電気自動車の電力需要が価格を通して連結することで、我が国の「将来エネルギー」の開発と世界に市場を持てる技術の開発に国民は参画し協力していることを、政府は明確にしなければ成らない。
価格連動により太陽光発電の電力は原則、全てが電気自動車の蓄電池に先ず納まることになる(経理上そうなる)。発展途中の量的ミスマッチについては後述第6項参照。
明確な販路と販売価格が見えることで、太陽光発電は高い買取価格でも胡散臭さはなくなり、フェアなビジネスとして促進されるであろう。
この価格政策は、家庭での充電にも、充電スタンドで販売価格にも適用する。
(その代わり、電気自動車を持つ家庭の太陽光発電は全量買取とする。充電スタンド会社は、太陽光発電会社を経営しても良いし、電力との卸価格(太陽光発電量だけでは不足する間)を交渉しても、また火力による自家発をしても良い。ただし、販売価格との差は課税対象として管理される。第6項の開発費となる)
幸い、42円/kWでも、電気自動車の燃費はガソリンより安いか、少なくとも高くはないはずである。国民の電気自動車への投資は、安くなる燃費で回収するのではなく、将来のエネルギー問題解決への参画という心意気で理解されるべきである。その為にも政府による大方針の説明が必要である。
(ハイブリッドが普及することと、その宣伝に、安い電力利用に依る低燃費で購入価格がオフセットされることを標榜する販売政策は、電気自動車の普及にブレーキをかけこの政策に対立する危惧がある。だから、政府は上記の政策の発表を急がなければならない。)
4.電気自動車への充電価格が高く設定される事による自動車産業への不利益は、政府による電気自動車の大々的普及促進キャンペーンによる販売応援効果を以て、補完されると見なすべきである。思い切った減税政策もその中に含まれるべきであろう。国民だけでなく自動車産業界もこの施策に参画する心意気を持つべきである。
5.また、ガソリン車が電気自動車に移行することで、自動車の化石燃料の消費は半減する。従って、電気自動車のために火力発電所を建てることを躊躇する必要はない。
更に、余った半分の化石燃料を在来の電力需要に当てても、温暖化ガスを増やさずに暫くは原子力発電停止(休止?)の不足分を補える。日本経済への影響と国際的温暖化ガス削減のコミットメントを考えるとこれは重要である。
(自家用車が全部電気自動車に替わると必要な発電量は800万KW x 365 x 24hr(KWH)。100万KW発電所10基。余った半分の石油であと同じ数だけの発電所をまかなえる。)
6.電気自動車の普及と太陽光発電量の増加と、蓄電池の経済向上とはその速度において、ミスマッチを最初から生ずるであろう。これについては心配はいらない。
先ず、前述第3項の充電価格政策は維持する。予想されることは、電気自動車の普及が先行する。従って、充電価格で販売される電力量は再生エネルギー発電量を上回るであろう。不足分は夜間火力電力による充電促進(何らかのインセンティブ政策が必要である)や火力の増設をする。火力の発電価格と電気自動車充電価格の差は、課税対象として管理する。この税金は蓄電池の(場合により太陽光発電素子やスマートグリッドの)開発促進の費用に充てる。第3項の充電スタンドの課税についても同じ。
太陽光発電買取は一般家庭用電力料や産業用電力料金への負担にならない。詰まるところ、燃費低減を期待しない電気自動車購入の初期投資がカバーしていることになる。だから、国民の参加要請と納得が必要なのである。
太陽光発電が普及して価格がさがり、かつ、発電量が電気自動車消費電力を上回り、蓄電池が安くなって、一般電力への利用が容易になって用途が増え、更に価格が下がり、発電量が増えと、正のスパイラルが予想される。再生エネルギー買取価格が下がれば勿論充電価格も下がり開発援助額も減る。正解である。
7.小規模の太陽光発電、電気自動車の充電とその蓄電能力の家庭用電力需要への利用など、すでに市場で始まっている再生エネルギーと電気自動車の関与する電力需給の形態は、スマートグリッドの技術が不可欠となる。先の電気自動車充電価格の管理に、この技術の初歩的な適用が必要であり、この技術の発展を促進する。 (ついでながら、スマートグリッド、小規模再生エネルギー発電などを含む多様化電源と、発電送電配電の経営分離は整合性があるのだろうか。これは、単なるつぶやき。ここでは別の問題である。)
8.原子力は今のところ人為的問題で当てにならない状態だから、太陽光発電をバックアップするものは火力発電であると考えておく。太陽光発電の発電量と時間の不確定さを100%補完できる蓄電池容量が実用的に導入できるまでの間は(或いは経済性から考えて100%補完は永久に不可能か)、その補完されない部分は、火力発電でバックアップが必要である。即ち太陽光に期待されていて不確定さが消せない部分(発電電力か発電電力量か筆者は今すぐ明快に言えない。後で考えておく)の100%容量に相当する火力発電設備が予備として必要である。(今日太陽が出ても雨でも、その日の電力供給は変えられないからだ! いつ休むかも知れないアルバイトの為に同数の正社員の待機が必要なのである。太陽光発電の蓄電能力が無い部分はそんな物である。)
だから、太陽光発電促進のために、遊休火力はある程度覚悟しなければならない。幸いに、火力発電の設備償却費は、発電の燃料費よりかなり低いから、使わなければ遊ばせておけばよい。火力設備があっても使わないときは温暖化ガスは出さない。もし太陽光発電価格が十分に下がれば、バックアップの設備償却費をカバーできるであろう。
上記第5項で言った火力発電は、同時に発展途上の太陽光発電のバックアップにもなる。電気自動車による化石燃料消費半減は、技術の過渡期のエネルギー政策に自由度を与えてくれる。
9.ところで、個人独裁国でも一党独裁国でもない自由経済の日本で充電価格の指定は独禁法に抵触しないか。買い取り価格が法律で決められるくらいだから、特別な販売価格を統制するくらいは法律で可能であろうと考えておく。価格統制とまで言われないよう、企業努力のインセンティブを与えながら実質を取る税制や他の方策は役所が考えて貰いたい。
電気自動車を持つ家庭の太陽光自家発電量を全量買上にすると、そのユーザーは電気自動車燃料費はその分が只になると計算できる。電気自動車を持たない家庭は、自家消費電力量を引いた余剰分だけの買取とする。
あるプロジェクト(或いは施策)を実施しようとするとき、先ずその障害となる事項を考える人間と、それを成功させるためにはどうすればいいかと考える人間とがいる。どうか後者の方式で考えて貰いたい。そうすれば、この提案よりもっと良い考えも出てくるであろう。
上記の舌足らずの部分は、2011年11月8日付けの「太陽光発電システム実用化の施策」もご一読願いたく。

